気まぐれ日記

更新は本当に気まぐれです。主にtwitterに書くには長いなと思ったネタを書きます。

日本の難点

日本の難点 (幻冬舎新書)

日本の難点 (幻冬舎新書)

宮台真司さんの日本の難点を読んだ。

といっても、最初に読んだのは少し前で、今回2度目が読み終わったのだが、本当に面白い。

さらっと読みたい時には若干難易度が高いのでお勧めできないが、時間を取ってきちんと読めばおそらく大部分の筋は理解できる程度の難易度で書いてあり、若干の難しさを補って余りがありすぎるほどに内容が面白い。

非常に身近な感覚から共有できる問題設定にたいして、ズバリと説得力のある道筋を示して行く様は読んでいて痛快ですらある。
単に社会学者というよりは、社会科学全般に深い知識を持った宮台氏だからこそ出来る技なのだろう。

ここからの内容は少しネタばれです。
更に私の理解で書くので少し違っていたら申し訳ない。

現代を「社会の底が抜けた時代」と表現する宮台氏。
現代は価値観の相対化が進んだ結果、正しいものが全て相対化され、正しさが沢山あることが一般化した時代だという。
絶対的な正しさが信じられなくなり、ルールなどは全て恣意的なものと理解される時代。
しかし、ルールが無くては社会は回らない。
だからあえて、正しさ(ルール)を選ぶことが必要になる。

普段の自分の感覚から考えても非常に納得できる話だ。
少なくても私くらいの世代以降の人にはこういう、正しさって相対的なものでしか無いよねという感覚を持っている人は非常に多い気がする。

絶対的な正しさ(ルール)は不可能だが、正しさ(ルール)を決めることは不可避。
ならばどうするか?


話は移り、社会が上手く回るためには、安定性(人間の入れ替え可能性)を生みだすためのシステム化が必要。
しかし、システム化は結果として人口の移動を招き、新住民だらけの都市ができあがる。
その結果、システム(公)/生活空間(共)/個人(私)という関係だった社会が、システム(公)/個人(私)という社会になり始めている。
そのため、個人に非常に大きな負担がかかっており、何かをきっかけに大きく挫折する人間が増えている。
では、どうするか?

こういうことが起きている!!現代社会は間違っている!!
などということは普通に生活していれば誰もが一度は考えることだろうし、居酒屋談義でさえよく耳にする。言うだけ無駄だと諦めている人も多いのではないだろうか。
この本はそんな誰もが感じる問題の原因はどこにあり、どういう対策が必要なのかという話を説得力をもって描いている。

社会的な事件、出来事に対して、世の中にはそれってほんとかよって言いたくなるようなピンと来ない説明も多いと感じていたが、そんななかで宮台さんの言説はときにとても刺激的でとても考えさせられるが、最後には腑に落ちる説明が多く聞いていてとても楽しい。
しかし、これまでの本はどちらかというと時事的な必要性の意識から書いており、読者を特定の人に設定している本が多かった気がする(私の読んだのがたまたまそうだったのかも知れないが・・・)

そんな中で、この本はテーマが現代日本社会全般であり、誰にとっても問題が非常に身近で、なおかつ多岐に渡っている。
宮台真司さんの本を読むきっかけとしては、非常に良いのではないかと思います。

値段も新書で安いですし、是非一度買って読んでみることをお勧めします。