気まぐれ日記

更新は本当に気まぐれです。主にtwitterに書くには長いなと思ったネタを書きます。

中期目標

先日、地球温暖化防止のための温室効果ガス削減の中期目標が日本政府より提示されました。

2020年に2005年比で15%削減。
(1990年比で8%減)

京都議定書のフェーズ1が2008年〜2012年の間−6%と言っていたのに、そこからの積み上げは8年間でたったの2%。

現在、研究の世界で言われていることは先進国全体で2020年に1990年比、25〜40%の削減が必要。
しかも25%はどうやら不十分らしい、という話。

この温度差って何・・・。

日本政府が言っていることには突っ込みどころが満載です。

2020年にこれ以上厳しい目標を設けると家計への負担が大きくなる。

さて、質問です。
あなたはお金を使うときに、何を考えますか?
値段と買ったらどうなるかを比較して考えるのが普通ですよね。

でも、この目標策定では、いくらかかるかは考えているのですが、その値段をかけるとどうなるのかにうついては、全然と言って良いほど考えていません。
いくらかかるのかだけを考えるなら、安い方が良いにきまってますよね。
でも、安いもんをかったら、あとで大損すると分かっていたらどうですか?

不十分な目標設定をした場合、温暖化は止まらず、日本にも
・世界全体で食料生産が減少する。(輸入価格が高くなる)
・気候の極端化がおこり、気象災害が増える
・熱帯性の病気が日本でも流行しだす
等の影響が予想されています。

これらによりどのような費用がかかるのかという予測を立てて、それを防ぐための費用と比較しなければいけないはずなのに、この部分の予測は不確実だからという理由で全く考慮していません。

不確実なものを買うというのは、まあ投資や保険なんかが近いと思うのですが、例えば投資とすると、いくら儲かるかは不確実だから、計算するのは一切やめましょう。
投資をした後で自分の懐に余裕があるかどうかだけを考えましょうっていう発想です。

あまりにもずさんなやり方ですよね。。。

一時的に、懐が苦しくなっても後で儲かるなら投資をしましょうという発想は皆無です。

もう一つ。

高い目標を設定しない理由として、最初に温室効果ガス削減の技術を開発するのはお金がかかる。
後々技術が普及しだしてからその技術を採用した方がコストが安く済むはずだ。

あとあと技術を入れるということは、世界中に普及するであろう技術は他所で開発してもらおうってことです。
そうしたら、その利益もまるまる他所に持っていかれます。

この部分でも計算がずさんです。
技術開発をしたら、儲かる見込みがあるのかどうか。
その計算をして、国として投資をするのか否かという発想が抜けています。

技術が普及してから入れた方が安上がりなのは確かに正しいですが、その場合は儲けはゼロの純粋な費用です。
技術開発への投資の発想は全くないですよね。


また、前にも書きましたが、温暖化防止の肝になるのは途上国(新興国)が防止の枠組みに参加するか否かです。
理由は、現状で途上国(新興国)の排出量は既に世界の半分に達しており、これから大きく延びることが予想されるから。

なのに日本政府の発想は完全に先進国しか見ていないようです。
政府は他の先進国と比べて遜色ないと主張しています(まあその実態は横に置くとしても)が、その目標で途上国が納得するのかという視点は欠けているようです。

状況をきちんと踏まえていれば、途上国が納得する目標を示しながら、先進国で不十分な目標を示しているところに対して、もっと削減するように交渉をすべきだと思うのですが。。。


何にしろ、現在の目標は国際的にまったく相手をされていない状態です。
これでは次の国際枠組みを決める際の交渉力にも影響します。
前回の交渉は不利な結果になったと言っておきながら、同じことを繰り返すのでしょうか。


最後に蛇足ながらもう一点。
2008年〜2012年の目標を日本は達成できないことが確実になっていますが、その理由は鉄鋼及び電力業界が、日本の削減計画を立てた際に自ら申告した目標を全然達成できなかったのが主要因です。
今回の目標策定の際に経団連を中心とした1990年比で4%増加(現在の努力を継続のみ)という驚くべき主張を通すための運動がありましたが、そこで大きなイニシアティブを発揮したのも、この鉄鋼、電力業界だと言われています。

自ら言ったことが達成できなかった人達が、開き直って削減なんて辞めちまえって言っているように映るのは気のせいでしょうか。

現状で、自己申告の目標ですら達成できていない両業界は、炭素に価格が付き徐々に上がるこれからの時代は苦しいというのはあるのかも知れませんが、だからといって長期的にみんなが損をするようなことを押し通して、自分たちだけが楽になろうなんていうのはどうなんでしょうか。
更に言えば、現状での技術が優れているというなら、途上国もある程度削減をする方向に交渉を持って行って、技術を輸出して儲けたらよいのに。

それと、こんな馬鹿なことを言っている人達の主張にも逆らえない現在の政権っていったい。。。
自民党政権の利点として、長年の経験にもとづいた政権を運営する能力というような主張をどこかでみた気がしますが、今回の一件を見る限りでは自民党政権にはその能力が全然ないということは分かった気がします(他党がどうかは不明ですが・・・)
他党のことはさておき、政権運営能力を売りにしていながら、確実にその能力がないという実績を残した人達には、早々と政権の座から退席してもらいたいものです。