気まぐれ日記

更新は本当に気まぐれです。主にtwitterに書くには長いなと思ったネタを書きます。

地球温暖化について

地球温暖化というのが政治的に作られた主張だという話を聞くことがあります。
科学的な知見が知りたい方は、一つまえに書いた「地球温暖化懐疑?」の記事で紹介している明日香先生の記事を読んでいただきたいのですが、私の専門である政治・経済的な情勢から、この主張について少し書いてみようかと思います。

まず、現在の政治・経済的な情勢から見る限りでは、地球温暖化が政治的に作られたというのはむしろ逆です。
IPCCの科学的知見は政治によりかなり、マイルドに伝えられています。

地球温暖化についての科学的な知見では地球の平均気温が産業革命前から2〜3℃気温が上昇すると、生物種の20〜30%が絶滅リスクに直面する可能性が高いとされています。

さらに、それを超えると、生態系の構造と機能、生物種の間の生態学的相互作用、及び生物種の生息範囲の重大な変化が生じ、その結果、生物多様性と生態系からの製品及びサービス(例えば、水及び食料の供給)に顕著に悪影響が生じることが予測されるとなっています。

では、2〜3℃の上昇に抑えるというのはどういうことでしょうか?
政府の言う美しい星50、2050年までに全地球の温室効果ガス排出量を半分にするというのが、2.0〜2.5℃の上昇に対応します。すでにこの目標でさえも、2℃以内の上昇ではありません。

さらに、この全世界で半減というのがどういうことかをご存知でしょうか?
現状で温室効果ガスは先進国が約半分、中国、インドを含む途上国が半分を排出しています。
今後、現在排出量が大きく延びている途上国で削減努力が進み、現状で推移したとしても、先進国の排出量はゼロにしなければ達成できない目標です。

さらに、途上国が半分排出しているということは、先進国のみの排出削減では意味がないということです。
では、途上国も排出削減に参加するためにはどうすると良いのでしょうか?
ある程度、公平な排出プランを提示する必要がありますよね。
そこで、一人当たりの排出量、GDPあたりの排出量などいくつかの公平性に関する指標のうちどれかが将来均等になると仮定して、国立環境研究所が日本の削減量を何通りにも試算したところによると、日本の削減量は1990年比で80〜90%削減する必要があるという数字がでています。
それに対して先ごろ、福田ビジョンに掲げられた数字は2050年までに60〜80%の削減です。
若干、トーンダウンしてますよね。さらに言えば基準年が示してません。(日本の排出量は最新データである、2006年で1990年比6.2%増加しており基準年の取り方で、話が変わります。)
ちなみに京都議定書の2012年までに1990年比で6%削減という目標ですら達成が危ぶまれています。

さて、ここで、これほど大幅な削減が必要だということをみなさんは知っていましたか?
こんなのはこまめに節約でどうにかなるレベルでは全然ありません。(もちろん、こまめに節約も大切ですが)
社会のルールが大きく変わらなければいけない状況です。専門家の間では産業革命に次ぐ、新たな革命が必要な状況といわれています。
しかし、このことは十分に周知されているでしょうか?

排出削減のための施策に対しても、経団連を中心に多くの有効と思われる施策が反対されています。

この状況を見るに、現在の地球温暖化というのは政治的に作られたというのはまったく正しくなく、政治的にマイルドにされた。対策が遅らされたというのが現状ではないでしょうか?


エコを商売にして怪しいものを売っているのもたくさんあります。
そういうのを見るとエコなんて胡散臭いというのもよくわかります。
しかし、そういう状況に付け込んで、政治的に地球温暖化は大したことない、あるいは起こっていないなどという、石油業界を中心としたプロパガンダが広まってしまっているというのは不幸な状況です。

正しい情報が何なのか。専門家じゃないから、分からないというなら、知り合いをたどって専門家に聞いていください。
私を含めて、環境関連分野で院生以上の人間ならば、地球温暖化懐疑論なんていうのは、プロパガンダの産物でしかなく、まったく持って科学的でないということを間違いなく教えてくれます。

こんなのは論争が分かれて争っている分野では全くありません。
環境懐疑論者の言うことのほとんどは、その分野の院生レベルであれば、即座にどこがおかしいと指摘できるような話です。
どうぞ、「地球温暖化詐欺」とう詐欺やら、「地球温暖化のウソ」というウソにだまされないで下さい。