気まぐれ日記

更新は本当に気まぐれです。主にtwitterに書くには長いなと思ったネタを書きます。

雪崩れについて


おいらのバイトしている栂池高原のスキー場で前の土曜日、とても残念な事故がありました。

ニュースで見た人も多いかと思うけど、悪天のため、立ち入り禁止となっていた初心者向けの林道コースに入っていった、9名が雪崩に巻き込まれ2名が死亡しました。

とても悲しい事故です。


今回は思うところあって、雪崩について、少し書いてみたいと思います。

と、言ってもおいらは雪崩に関して詳しい人間ではないのですが、大学時代にワンゲルをやっていて、バックカントリーを滑っていたので、最低限はとやった内容です。今回はざっくばらんに触り程度に書きます。

手元に資料がなく、記憶で書くので正確ではない部分もあるかも知れませんので、詳しく勉強したい人は本などを参考にして下さい。


まずは、雪崩が起きるメカニズムについて簡単に説明すると、雪崩っていうのは斜面に積もった雪が重さで下に滑り落ちることで起きる現象です。

この時に重要なのは、雪が降る時に色々な雪質があるように、斜面に積もった雪も色々な雪質で積もっていて、それが地層のように積もっているということ。

ちょうど下の写真みたいな感じの雪の断面は見たことあるんじゃあないでしょうか。


この断面の中には当然、晴れた昼間に解けた雪が夜に冷えて凍って出来た、カリカリのアイスバーンなんかも入っています。

で、そういうのが入っていると何が起きるかというと、アイスバーンはほとんど氷だから、表面が滑り易い訳で、上に大雪が乗ったり、雪+人の体重が乗ったりして、摩擦で支えられる限界を超えるとツルッと滑っていく訳です。

これが、ざっくばらんに言うと雪崩の起きるメカニズムです。

で、この時、アイスバーンみたいに、ツルッと滑り出す原因となる層を弱層と言い、弱層が原因で起きる雪崩れを表層雪崩れと言います。

弱層にはアイスバーン以外にも種類があるのですが、詳しい話が知りたい人は本等を当たってください。

ちなみに雪崩には、主に春先に地面との間で雪が丸ごと滑り落ちる全層雪崩れというのもありますが、今回は割愛します。


雪の中に入った弱層は、ある程度積もる間、雪崩が起きなければ、上からの荷重で圧着されてゆき、上下の層と強固に結びついてゆき、徐々に弱層ではなくなっていきます。

ばらばらの粉雪もぎゅっと握り固めれば、まわりの雪とくっ付いて固まるでしょ。それと同じことです。

で、これを人工的にやるのがスキー場の圧雪、ピステンってやつです。だから、スキー場内は弱層があるようなコンディションの日でも安心して滑れる訳です。


では、スキー場以外、バックカントリーを滑る時はとなると、色々と経験や対策が必要になるわけです。

まぁ、詳しい話は本等で勉強するとともに経験者に教えてもらった方が良いので、ここでは書きません。


さて、バックカントリーを滑るための一つの手段として、弱層が無いか調べるテスト法がいくつかあるのですが、その中でも最も簡易な方法で、今日の栂池高原スキー場内の斜面の様子を観察してきたので、何かの参考になればと載せます。

今回、事故が起きた林道から200m程下の部分が、今日は入れる状態であり、今回の事故とは位置関係的に関係ないですが、写真の様な比較的新しい雪崩の跡があったので、少しチェックをしてみました。日付としては事故からは2日後で斜面(沢筋)の向きはほぼ同じと思われます。


まず、やり方としては安全な斜面(テスト自体が雪崩れを起こす事があるのでこれが重要)に円柱を掘ります。



少し形が歪になってしまったのはまだ、経験不足で慣れてないせいです。すいません。

そこから新雪を払うとこんな感じ。



写真奥の雪の層の一番上に見える線と新雪を除けた面が対応してるのが分かるでしょうか?


次に雪柱の一番上の部分を手首の力、肘から先の力、肩からの力、腰からの力の4段階で引っ張り、ずれる層がないかをチェックします。

目安としては腰からでも動かなければまぁ、安全。肩からの力で動く層からはもう注意が必要で、特に手首の力で動く層は非常に危険で滑ってはいけないと言われています。


では、テストの結果です。

まず、一番上の弱層ですが、手首の力でスッと落ちてしまいました。



ここでも上の切断面で目視できる色の違う層と対応してます。おそらくはアイスバーンでしょうか。

落ちた層はこんな感じです。弱層の面が綺麗に写ればと思ったのですがカメラではちょっと無理なようです。



次の層は肘からでした。



落ちた層はこんな感じ。



その次も肘からで落ちました。



その下の残った円柱については腰からでも動きませんでした。

本当はもっと下まで掘るのですが今回はこのぐらいで、1m弱ほどの間に弱層が3つ確認できました。

200m上の事故現場付近では、条件はまた違うかと思いますので参考程度ですが。

ちなみに事故前日にナイターで滑った時には、斜面が硬くアイスバーンであり、当日は少し大雪だったのでおそらくはこの一番上の弱層はそれによるものではないかと思われます。


さて、長々と雪崩れについて書いて来ましたが、話を最初に言った思うところに移したいと思います。

事故の翌日、憂鬱な気分ながらも、何があったのか出来るだけ確かめたいとの思いからリフトに乗り込みました。

そこで、信じられないものを目にしたんです。


コース外に付けられた真新しい滑走の跡です。


昨日の今日ですよ。

しかもコース外の状態は昨日に引き続きかなり危険な状態だと思われるそんな時にです。


一度、雪崩れが起きたとこは安全だなどという根拠のまったくないデマがありますが、それでも信じたのでしょうか。

一体何を考えてるんだろうか、本当に信じられませんでした。


ちなみにコース外の滑走痕は今日も一本見つけてしまいました。。。


滑った人は理解してるのでしょうか、自分が超えたそのロープの意味を。

スキー場が管理している地域との境界を表すのがロープです。

つまりロープを超えるということは、バックカントリー、雪山に入っていくのと同じ意味だということを。

そこでは自分の知識や経験で滑れる場所かを判断しなければいけないんですよ。

今まで書いた程度のことは本当に初歩の常識程度の話です。

それだけでも知っていれば、雪崩事故の翌日、コンディションもあまり変わってない日圧雪の場所に入るなんて絶対しないはずなのに。

同じような向きの斜面には、かなりの確立で同じような弱層があるのですから。


バックカントリーに入るなとか、ロープを超えるなとか、えらそうに言いたい訳じゃないんです。

やるなら最低限の勉強くらいはして来いよと。


恐らくは、他の人が入っていくのを見て真似して入りだしたのでしょうが、これは赤信号や横断歩道のない道路を、自分で車や信号を確認せず隣の人に釣られて踏み出していくようなもんではないでしょうか?

そりゃ、大丈夫なことも多いでしょうが、隣の人に釣られて踏み出したら赤信号でヒヤッとしたなんて覚えは誰にでもあるでしょう。

ゲレンデは青信号の横断歩道みたいなものです。そこでは隣の人に釣られてで良いでしょうけど、ロープを超えればそこは赤信号の道路です。

何の備えもなく気軽にロープを超えてくなんて、自分で車を確認できない幼児が一人で信号無視で渡っていくようなもんではないでしょうか。

たまたま車がこなければ良いけど、それがどれだけ危険なことか。


ちなみに私はバックカントリーは行きますが、スキー場ではロープは超えないようにしています。

どっかの馬鹿に真似されたら危険だから。小さい子の前では信号を守るのと同じ心理です。